澤研究室 構造物性物理学講座 構造物性工学研究グループ
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Cu0.33TiSe2におけるハニカム型CDW秩序 (2019年2月 PRB: Rapid Communications に掲載)
  半金属的なバンド構造を有する層状化合物1T-TiSe2は、約200 Kで超格子構造(2a × 2a × 2c)の形成を伴う電荷密度波(CDW)転移を引き起こす[1]。この系の相転移には電子-格子相互作用だけでなく、電子-正孔(励起子)相互作用が重要な役割を担っているとされ、最近では励起子相候補物質として実験・理論の両面から盛んに研究が行われている[2]。さらに、2006年にCu+イオンをインターカレートしたCuxTiSe2 (0 ≦ x ≦ 0.10)において、この系で超伝導が初めて報告された[3]のを皮切りに、その後、圧力[4]やFETによるキャリア注入[5]によっても続々と超伝導が報告され、その電子状態についても注目されている。超伝導が報告されたCu低ドープ領域(0 ≦ x ≦ 0.10)については多角的な実験や計算が行われているが、Cu高ドープ領域(x > 0.10)については報告が少なく、基礎物性ですらよく分かっていない。より高電子ドープすることで、正孔ポケットをなくして励起子相互作用を完全に消失させたTiSe2層の電子状態の解明は、この系のエキゾチックな物性を理解する上でも重要である。

我々はCuxTiSe2 (0 ≦ x ≦ 0.35)の単結晶試料を合成し、電気抵抗測定、磁化測定、DSC測定、放射光X線回折実験、DFT計算を行い既報のx-T相図の拡張を行った。その結果、x ~ 1/4, 1/3のそれぞれにおいて1T-TiSe2とは異なる新たな超格子構造を伴う相転移を確認した。特に、Cu1/3TiSe2の低温相における詳細な解析の結果、実空間における層間のCuイオンの空間的な秩序化と、逆空間におけるTi-3dを主成分とするフェルミ面のネスティングが協力的に起こり、TiSe2層内でハニカム格子型のCDWが実現していることが分かった(図)。   
  
本研究結果は歴史ある1T-TiSe2において新たなCDW状態を解明しただけでなく、この系のx-T相図の全貌を明らかにしたものである。   
  

Cu1/3TiSe2の低温相における結晶構造。電子richなTiSe6八面体(赤色)がハニカム格子を形成している。

<掲載論文>
"Honeycomb lattice type charge density wave associated with interlayer Cu ions ordering in 1T-CuxTiSe2" Shunsuke Kitou, Shintaro Kobayashi, Tatsuya Kaneko, Naoyuki Katayama, Seiji Yunoki, Toshikazu Nakamura, and Hiroshi Sawa Phys. Rev. B 99, 081111(R) (2019).
<参考文献>
[1] F. J. Di Salvo et al., Phys. Rev. B 14, 4321 (1976). [2] A. Kogar et al., Science 358, 1314 (2017). など [3] E. Morosan et al., Nat. Phys. 2, 544 (2006). [4] A. F. Kumartseva et al., Phys. Rev. Lett. 103, 236401 (2009). [5] L. J. Li et al., Nature 529, 185 (2016).
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