澤研究室 構造物性物理学講座 構造物性工学研究グループ
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励起子絶縁体Ta2NiSe5のフォノンダイナミクス (2018年8月 Physical Review B に掲載)
  Ta2NiSe5は電子とホールとが対凝縮することによって生じる"励起子絶縁体"という特異な電子状態にあると考えられている物質である。理論計算により、Ta2NiSe5では励起子対凝縮と格子系が強く結合することで協力的に量子秩序相が実現していることが提案されており、実験的にこれを検証するために放射光X線非弾性散乱実験を行った。

  フォノンダイナミクスを調べてみると、通常の物質では構造相転移は単一のソフトモードで記述できるのに対して、Ta2NiSe5ではいくつかのフォノンモードが絡み合うことで構造相転移が生じていることが分かった。特にTaの原子振動に由来する光学モードの線幅の温度依存性は非常に興味深く、相転移温度(328 K)よりも高温側で顕著にブロード化した。フォノンの線幅がブロード化することは、電子系との散乱によりフォノンに寿命が生まれたことを意味しており、この系では相転移温度よりも高温側において前駆的に非常に強い電子-格子相互作用が働いていることが示唆される。


Ta2NiSe5の非弾性散乱スペクトル(a)300 K (b) 400 K

  <掲載論文> "Antiferroelectric distortion with anomalous phonon softening in the excitonic insulator Ta2NiSe5" Akitoshi Nakano, Takumi Hasegawa, Shinya Tamura, Naoyuki Katayama, Satoshi Tsutsui, and Hiroshi Sawa Phys. Rev. B 98, 045139 (2018).
  <参考文献> "Orthorhombic-to-monoclinic phase transition of Ta2NiSe5 induced by the Bose-Einstein condensation of excitons" T. Kaneko, T. Toriyama, T. Konishi, and Y. Ohta, Phys. Rev. B 87, 035121 (2013).
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